活動報告

「無線の歴史100年」 2つの記念アマ無線局がYRPで合同運用

〜JRC×NICT×アンリツ:日本の無線技術を先導してきた3社のアマ無線家が集合〜

2015年10月12日

日本無線株式会社(JRC)に勤務するアマ無線家らによる「日本無線アマチュア無線クラブ」(コールサインJJ1ZXE)は、無線電信法の制定に始まる日本の無線の歴史100年並びに日本無線(株)創立100周年を記念するアマ無線局(コールサイン8J100JRC)を、今年8月から運用しています。
一方、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)とアンリツ株式会社に勤務するアマ無線家らは、両社の前身組織が1912年に世界初の実用無線電話(TYK式無線電話)の発明と製作をそれぞれ行った縁から、合同で記念局実行委員会を結成し、今年は逓信省電気試験所平磯出張所(現・NICT平磯太陽観測施設)の開設100周年等を記念するアマ無線局(コールサイン8N100ICT)を運用しています。
我が国の無線の歴史100年の節目を記念するこれら2つのアマ無線局の関係者が集合し、去る9月12、13両日に、情報通信関連の研究開発拠点が集積する横須賀リサーチパーク(YRP)において、合同で2つの記念局の運用を行いました。
明治から大正時代の無線通信の黎明期に創立して今日まで我が国のワイヤレス技術を先導してきたJRC、NICT、アンリツの3社のアマ無線家らによる、合同運用の模様をご紹介いたします。

有線無線電信電話の業務は明治時代には官営に限定されていましたが、1912年のタイタニック号沈没事故をきっかけに船舶無線の重要性が高まったことから、1915年(大正4年)に無線電信法および私設無線電信規則が制定され、無線局の私設が認められることになりました。同法により無線業務の需要の激増が予測されたために、時期を同じくして、1.無線装置の製造体制の拡充、2.激増する無線装置を国家検定する体制の拡充、それに3.無線従事者の養成体制の確立が、それぞれ図られました。1.により現在のJRCが創立し、2.により逓信省電気試験所の無線部門が拡充されて無線技術専門の研究拠点「平磯出張所」が現在の茨城県ひたちなか市に設けられ、3.によりアンリツの前身会社が日本最初の私設無線電信従事者養成所(帝国無線電信通信術講習会)を工場内に開校しました。なお、帝国無線電信通信術講習会の業務は、後にアンリツから電信協会に移管されて無線電信講習所となりました(現在の電気通信大学)。このように、8J100JRCと8N100ICTの2つの記念局は、いずれも無線電信法に深い縁があることから、戦後に電波法が施行されるまで無線通信に関する基本的な法律として機能していた同法の制定100周年を、合同で記念する活動を行うことにしたものです。

合同活動の場所として、NICT創立10周年等記念局8J10NICTの移動運用を昨年に実施した、横須賀リサーチパーク(YRP)を選びました。YRPは、郵政省(現:総務省)、横須賀市、京浜急行電鉄(株)、YRP研究開発推進協会、(株)横須賀テレコムリサーチパークにより、NTT横須賀研究開発センタの東側に開発され、NTTドコモのR&Dセンタを始めとして、無線技術を始めとする情報通信関連の研究開発拠点が集積しています。また横須賀の歴史は無線技術の黎明期と深く関わりがあり、市内には1905年(明治38年)の日露戦争の日本海海戦における旗艦「三笠」が記念艦として保存公開されており、艦内には「敵艦見ゆ」の無線電信を発信して日本海海戦を勝利に導いた、アンリツの前身会社製の海軍三六式無線電信機(レプリカ)が展示されています。まさに無線電信法制定100周年の記念活動を行うのにふさわしい土地といえます。

今回の合同運用は、昨年の8J10NICTによる移動運用の時と同じく、横須賀リサーチパークアマチュア無線クラブ(コールサインJN1YRP)の参加協力を得て実施しました。参加者数は、JRCが5名、NICTが3名、アンリツが3名、YRPが5名でした。9月12日は、11時頃からメンバーがYRPセンター1番館に集まり、準備を行いました。まず屋上に仮設アンテナを立てる作業を行いました。2つの無線局が同じ場所から同時に電波を発射しても干渉を回避できるように、1.9MHzのフルサイズダイポールアンテナから1200MHzのグランドプレーンアンテナまで、多くの周波数帯を準備しました。

両局は正午頃から順次運用を開始しました。CWと電話による通常の交信に加えて、8J100JRCは144/430MHzによる衛星通信や、7MHz帯でSSTVも行うなど、多くの通信方式でサービスを行いました。また同一周波数に合わせた2局2台の無線機で、同一相手局と順番に交信するなど、同時同所での合同運用の特徴を活かしたサービスも行いました。

9月12日の夕方には、YRPセンター1番館にあるYRP無線歴史展示室を特別に見学させていただきました。同室はYRP関係各社の協力により、無線の黎明期から最新技術までの資料の収集と展示を行っており、開室して1周年を迎えたところです。通常は土日休室のところを、無線通信の歴史にゆかりのある組織のアマ無線家が多数参加する今回のイベントをご理解いただき、特別に開室していただいたものです。(株)横須賀テレコムリサーチパークの太田現一郎室長から1時間に渡り詳しい説明を受け、貴重な資料群と、黎明期の無線と横須賀との関わりの深さに、見学者は感嘆の声を上げていました。

ところでJRCは、CSR活動として、小学校4年生以上を対象としたオリジナルのAMラジオ製作教室を、数年前から各地で行っており、その活動には8J100JRCのメンバーも関わっています。今回の合同運用の最中に、YRPのメンバーの1人が小学校3年生のお嬢さんを連れてきたため、急きょ1名限定のラジオ製作教室が開講されました。JRCのロゴマークが入ったレア物のAMラジオをうらやましそうに見つめる元ラジオ少年たちに見守られながら、そのお嬢さんは半田づけやスパイダーコイルを巻く作業を器用にこなし、無事に完成してラジオを鳴らしていました。

YRPセンター1番館屋上に仮設したアンテナ群アマチュア無線衛星FO-29を使った衛星通信(8J100JRC)
屋上で2つの記念局が数メートル離れて陣取りJN1YRPの無線室での運用(8N100ICT)
YRP無線歴史展示室の特別見学1名限定のラジオ製作教室

2日目の9月13日も両局は朝から活発に交信し、16時に運用終了するまでの2日間に、8J100JRCは衛星通信も含め約410局、8N100ICTは約440局と交信しました。合同運用では交信サービスのみならず、メンバー同士の交流も深まり、有意義な活動となりました。参加メンバーは、今後も無線通信の歴史に関わる記念局の活動を合同で行う機会を持つことを約束して、解散しました。

8N100ICTに続いて来年には、無線通信120周年の新たな記念局を立ち上げる計画があります。次の記念局は、NICT関係者の枠を超えて、オールジャパンの記念局として、全国の元ラジオ少年たちを発掘して、交流していきたいと考えています。今回の合同運用が、その前段として成功したことは、誠に喜ばしいことです。

最後に、我々の活動にご理解とご協力をいただいた、YRP研究開発推進協会、および施設を管理する(株)横須賀テレコムリサーチパークに感謝いたします。

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