おしらせ

「電離層観測発祥の地」開設100周年を記念するアマチュア無線局が
つくば市内で1日限定開局

〜地元の中高生ハムらと「つくば科学フェスティバル2015」の開催をPR〜

2015年10月16日

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、東京都小金井市貫井北町4-2-1)に勤務するアマチュア無線家らは、逓信省電気試験所平磯出張所(現・NICT平磯太陽観測施設、茨城県ひたちなか市磯崎町3601)の開設100周年等を記念する期間限定のアマチュア無線局(コールサイン8N100ICT)を運営しています。

来たる10月25日(日)に、茗溪学園中学校高等学校(茨城県つくば市稲荷前1-1)の教室内に同無線局を仮設し、同校の科学部無線工学班の生徒、および国立研究開発法人産業技術総合研究所つくばセンター(AIST、茨城県つくば市梅園1-1-1)に勤務するアマチュア無線家らの参加を得て、1日限定で開局することになりましたので、お知らせいたします。

●アマチュア無線記念局とは?

個人的な興味に基づく無線通信や技術研究を目的とするアマチュア無線局には、1人で開設する「個人局」のほかに、複数人が合同で開設する「社団局」があり、社団局の一種として、特別な行事の際にのみ、総務省から期間限定で免許を受けて開設する「記念局」があります。記念局は、冒頭に数字の8が付く特別なコールサインを使い、交信相手に対して特別な交信証(QSLカード)を発行するため、全国・全世界のアマチュア無線家たちから交信希望が殺到し、交信を通じて記念内容を広くアピールする役割を果たします。また、記念内容に関連する場所に無線装置とアンテナを一時的に移動・仮設して交信する活動によって、その場所の由来を広く紹介する役割も果たします。

●記念局8N100ICTとは?

8N100ICTは、逓信省電気試験所平磯出張所(補足説明1)の開設100周年等にちなみ、2014年12月1日から2015年11月30日までの1年間限定で免許されているアマチュア無線記念局です。これまでに、ゆかりのある場所に移動して無線局を開局してきた(下掲写真)ほか、各地で開催される科学イベントに出展し、電波と無線に関する科学技術を市民にわかりやすく紹介する活動を続けています。

三重県鳥羽市立図書館
(2014年12月)
仙台市・東北大学
(2015年7月)
茨城県大洗町
(2015年8月)
神奈川県横須賀市
(2015年9月)

●なぜつくば市内で開局するの?

つくば市内にある国立研究開発法人産業技術総合研究所は、平磯出張所(補足説明1)を設けた逓信省電気試験所の本家筋に当たる機関(補足説明2)のため、同所に勤務するアマチュア無線家らの参加を得て、本家筋のお膝元であるつくば市内において開局し、平磯出張所100周年を記念する活動を合同で行うことにしたものです。

一方、つくば市にある茗溪学園中学校高等学校の科学部無線工学班は、アマチュア無線のコンテスト(制限時間内の交信局数を競う競技)で全国上位入賞の常連校として知られています。記念局活動を通じて次世代の技術者・研究者の育成にも寄与したいと考えている8N100ICTの実行委員会は、100年の歴史を振り返る活動にとどまらず、未来志向の活動として、将来の科学技術を担う中高生らに、記念局の運用を経験する機会を提供したいと考えたものです。

●記念局は10月25日に何をするの?

当日は10時頃から16時頃まで、茗溪学園中学校高等学校に仮設した無線機とアンテナを使い、さまざまな周波数の電波で、全国・全世界の無線家と交信します。本記念局をつくば市内で開局するのは今回が最初で最後になるため、当日はつくば市近辺をはじめとする多数のアマチュア無線家と交信できることを期待しています。

また、翌週末に開催される「つくば科学フェスティバル2015」に、8N100ICTの実行委員会が出展(補足説明3)するため、地元のアマチュア無線家に対して、無線交信を通じて同フェスティバルの開催を予告宣伝します。

 
茗溪学園中学校高等学校におけるアマチュア無線記念局8N100ICTの運用のご案内
運用日時2015年10月25日(日)10〜16時 雨天決行
(無線設備の設置調整に要する時間により、運用時間は前後する場合があります)
運用場所茗溪学園中学校高等学校(茨城県つくば市稲荷前1-1)
無線局コールサイン8N100ICT/1
運用予定周波数帯(予定)7、21、28、50、144、430MHz帯
主催無線通信研究アニバーサリーアマチュア無線記念局リレー実行委員会
※運用の現場は一般非公開です。

【補足説明1】逓信省電気試験所平磯出張所(平磯無線)について

携帯電話、スマホ、Wi-Fiなど、今や日常生活にとって不可欠な無線(ワイヤレス)技術は、1895年にイタリアのマルコーニが世界で初めて実用化に成功し、我が国ではその翌年の1896年(明治29年)に、当時の逓信省電気試験所(補足説明2)において実験研究が始まりました。

その無線技術の研究は、当初は東京の市街地にあった逓信省電気試験所の本部で行われていましたが、太平洋をまたぐ長距離無線通信の研究を本格化するために、1915年(大正4年)に、現在の茨城県ひたちなか市に平磯出張所(通称「平磯無線」)が設けられました。発足当初の平磯無線では、アメリカで発明されたばかりの真空管を使用した無線装置の設計・開発にいち早く着手し、当時の主流だったモールス符号(トンツー)でなく、音声を直接電波に載せて送る「無線電話」の研究において世界的な成果を出しました。例えば、トランシーバのように送話と受話を交互に行うのでなく、現在の携帯電話と同じく送話と受話が同時にできる全二重無線電話方式や、無線装置を電話交換機に接続して、現在の携帯電話〜固定電話間と同じように有線と無線の相互接続通話を可能にするなど、今日では当たり前になっている電話技術は、世界に先駆けて平磯無線において開発されました。また、1925年(大正14年)に東京・愛宕山のJOAK(現・NHK)によってラジオの本放送が始まる準備としての調査・試験が平磯無線で数多く行われ、日米間初の無線電話実験にも成功しました。

平磯無線は、1932年(昭和7年)に日本で初めて電離層(地球上空を取り巻いている、電波を反射・吸収する層)の定常観測を始め、短波帯の電波の伝わり方の研究、電波状態の乱れによる無線通信への影響を予測・周知する電波警報業務、そして電波状態の乱れの原因の多くを占める太陽活動の観測へと、今日まで一貫して電波・無線技術に関する研究・観測拠点として活動しています。昭和30年代には、東京大学の糸川英夫教授らのグループと共同で、秋田県の道川海岸におけるロケット打ち上げ実験に参加し、電離層の直接観測を繰り返し行うなど、我が国の宇宙開発の黎明期にも、平磯無線が大きく関わっています。

昭和初期の平磯無線現在の平磯無線(NICT平磯太陽観測施設)

【補足説明2】逓信省電気試験所について

平磯出張所を設けた逓信省電気試験所(英語名Electrotechnical Laboratory)は、電力、計測標準、電信電話、無線などの強電から弱電まで電気技術全般を担う国の試験研究機関として、1891年(明治24年)に創立しました。終戦後に、電力と計測標準などの強電系の試験研究については、通商産業省(現・経済産業省)に移管され、引き続き電気試験所として、現在の産業技術総合研究所の源流の一つになりました。一方、電信電話と無線などの弱電系の試験研究については、逓信省に新たに発足した電気通信研究所に引き継がれ、現在の情報通信研究機構のほか、NTT研究開発センタやKDDI研究所などになりました。変遷の詳細は別紙をご参照下さい。

つくば市には、1970年(昭和45年)に電気試験所から改称した電子技術総合研究所(英語名は電気試験所と同じElectrotechnical Laboratory)の本部が2001年まで置かれていたことから、逓信省電気試験所の“本家筋”は、産業技術総合研究所つくばセンターということになります。

東京・五反田にあった逓信省電気試験所の本館
(1941年の創立50周年式典時の写真)
跡地は現在、NTT東日本関東病院(旧・関東逓信病院)になっています。

1913年(大正2年)の電気試験所研究報告
平磯無線を開設した鳥潟右一博士による、TYK式無線電話機(世界初の実用無線電話)の論文の表紙です。左下に「逓信省電気局電気試験所平磯分室」の蔵書印が押されています(大正7年に電気試験所の官制が発布されるまでの平磯出張所の正式名称)。
【参考】電子技術総合研究所(電総研)研究報告の一例(平成11年)
産業技術総合研究所(産総研)に統合される直前の論文です。表紙のデザインが左の鳥潟論文とほとんど変わらないことが、逓信省電気試験所の「本家筋」であることを物語っています。

【補足説明3】つくば科学フェスティバル2015について

つくば科学フェスティバル2015は、10月31日〜11月1日に、つくばカピオ(茨城県つくば市竹園1-10-1)において開催される、科学を楽しむための体験型のイベントです。市内の小中学校・高校・大学、研究機関など56団体が出展し、研究者や学校教職員と子どもたちによる科学実験をはじめ、観察、工作、「児童・生徒の科学作品展」など様々なコーナーが設けられます。主催は、つくば市、つくば市教育委員会、筑波研究学園都市交流協議会つくば3Eフォーラム委員会です。

記念局8N100ICTの実行委員会は、今年の同フェスティバルに初出展し、「もしも携帯電話が同時送受話できなかったら?」と題して、交互送受話しかできない特定小電力無線電話機を用いた通話を、来場者に体験していただき、同時送受話できる無線=携帯電話の便利さと、その技術のルーツが100年前に茨城県内で誕生したことをご紹介する予定です。

また、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の前身の一つである宇宙開発事業団が、発足当初から筑波宇宙センターが整備されるまでの期間に使用していた衛星試験棟(東京都小平市)がこのほど解体される機会に、その歩みをご紹介するポスターも展示します。同棟は、宇宙開発事業団の最初の人工衛星「きく」や、国産初の実用衛星「うめ」の耐環境試験に使用された由緒ある施設で、筑波宇宙センターの先輩に相当し、情報通信研究機構に移管後は電波無反射室として今日まで使用されていました。

間もなく取り壊される宇宙開発事業団衛星試験棟
(東京都小平市、現在は情報通信研究機構の施設)

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