おしらせ

「電波時計の生まれ故郷」検見川無線送信所跡から、
標準電波JJY開局75周年をPRするアマチュア無線記念局を運用します

2015年4月16日

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の職員有志らは、我が国の無線通信の研究の歴史を振り返り広く紹介することを目的とするアマチュア無線記念局を、2014年から開設・運用しています。

今日広く普及している電波時計は、NICTが全国2箇所から送信している「標準電波」を受信することで時刻合わせを行う仕組みになっています。この標準電波の歴史は、現在の千葉市花見川区にあった逓信省東京逓信局検見川無線送信所による無線検査官向けの測定器調整用として、1927年(昭和2年)に始まりました。今年は、その標準電波が1940年(昭和15年)にコールサインJJYの無線局として広く一般国民向けのサービスに移行して75年の節目に当たります。そこで来たる4月25,26両日限定で、現在は千葉市検見川稲毛土地区画整理事業地内にある検見川無線送信所跡に、アマチュア無線記念局(コールサイン8N100ICT)を仮設し、地元・全国・全世界のアマチュア無線家に向けて、由緒ある検見川無線送信所と標準電波の節目の年をPRするための無線交信サービスを行いますので、お知らせいたします。

●アマチュア無線記念局について

アマチュア無線局には、アマチュア無線技士の資格を持つ者が集まって合同で開設する「社団局」があり、その一種として、特別な行事の際にのみ、総務省から期間限定で免許を受けて開設する「記念局」があります。期間限定の記念局は、特別なコールサインを使い、交信相手に対して特別な交信証(QSLカード)を発行するため、全国・全世界のアマチュア無線家たちから交信希望が殺到し、交信を通じて記念内容を広くアピールする役割を果たします。

●無線通信研究アニバーサリーアマチュア無線記念局リレーについて

アマチュア無線技士の資格を持つNICTの職員有志は、無線通信の歴史を振り返り広く紹介することを目的とするアマチュア無線記念局を、NICTの賛同を得て開設し、運用しています。普段はNICTの本部(東京都小金井市)において業務の合間に全国や全世界と交信しているほか、休日には無線通信の歴史にゆかりのある場所に無線装置を移動・仮設してオンエアし、その場所の歴史的意義を広く紹介しています。また、展示会や科学イベントへの出展なども積極的に行い、市民に広く無線通信技術を紹介する活動も行っています。この記念局は、2014年から2016年にかけて、1年に1局ずつ計3局を開局して、リレー式に運用する計画になっています。

●電波時計と標準電波について

電波時計は、正確な時刻信号を乗せた電波を定期的に受信することにより、ズレを補正して、常に正確な時間を表示する仕組みになっています。この正確な時刻信号を乗せた電波を「標準電波」と言い、我が国ではNICTが、羽金山(福岡県/佐賀県)と、大鷹鳥谷山(福島県)の全国2箇所に設置した送信所から発射しています。

●検見川無線送信所と標準電波について

1927年に始まった無線検査官向け標準電波、および1940年に始まった一般国民向け標準電波(コールサインJJY)は、いずれも逓信省東京逓信局検見川無線送信所から発射されました。当時の標準電波は、主に無線装置の周波数のズレを補正するための技術者向けの基準として、「短波」という高い周波数の電波が使われていましたが、正確な周波数と時刻を広く全国に安定して届けるためには、低い周波数の「長波」のほうが有利であることがわかってきました。そのため1966年(昭和41年)に、NICTの前身である郵政省電波研究所が、現在と同じ長波(40kHz)による標準電波を試験発射するための実用化試験局(コールサインJG2AS)を、やはり検見川無線送信所(当時は電電公社(現・NTT)が運営)に設置しました。JG2ASの送信所は検見川無線送信所の廃局に伴い1977年に茨城県内に移りましたが、このJG2ASを利用して時計メーカーによる電波時計の研究開発が進められ、21世紀に入ってJJYが短波から長波に完全移行したのに合わせて、電波時計の普及が本格化しました。そして今日では電波時計は一家に一台に迫る勢いで普及しています。つまり検見川無線送信所は、標準電波の誕生の地であるとともに、現在の電波時計に使われている「長波標準電波」の誕生の地でもあり、すなわち「電波時計の生まれ故郷」といえます。

短波標準電波JJY開局当時の検見川無線送信所(1940年)
(写真中央の本局舎のみ現存)
長波(40kHz)標準電波実用化試験局JG2ASの送信アンテナ(検見川無線送信所, 1966年)
出典:郵政省通信総合研究所(現・NICT)編 「標準電波50年の歩み」(1991年)

●検見川無線送信所跡での記念局運用について

今回の運用は、一般国民向けに標準電波JJYの発射が開始されて今年で75年になる節目をPRするために、2015年4月25日(土)と26日(日)の2日に渡り、それぞれ午前から夕方まで、検見川無線送信所跡地内にアンテナを仮設し、無線機を搬入して、アマチュア無線記念局を屋外運用するものです。検見川無線送信所は、電電公社時代の1979年に無線局としての業務を終えましたので、その地から電波が発射されるのは30数年ぶりといえます。当日は近隣の千葉市を始め、多数のアマチュア無線家と交信できることを期待しています。

なおこの運用は、検見川無線送信所跡を管理している千葉市検見川稲毛土地区画整理事務所、並びに千葉市役所総合政策局総合政策部政策企画課と、昨年10月頃から協議・調整を重ね、さらに地元住民のご理解とご協力を得て、このほど実現する運びとなりました。

屋外運用する予定の検見川無線送信所跡アマチュア無線記念局の屋外運用のイメージ
   
検見川無線送信所跡におけるアマチュア無線記念局の運用のご案内
運用日時2015年4月25日(土)、26日(日)  雨天決行
運用時間両日とも午前〜夕方(無線設備の設置調整に要する時間により、運用時間は前後する場合があります)
運用場所検見川無線送信所跡(千葉市花見川区検見川5丁目、検見川稲毛土地区画整理事業地内)
コールサイン8N100ICT/1
運用予定周波数帯HF〜430MHz
※運用の現場は千葉市の管理区域内のため一般非公開です。当日は千葉市の職員が立ち会います。

【関連情報】標準電波(コールサインJJY他)の公式発射開始記念日(1月30日)におけるアマチュア無線記念局8N100ICTの運用について
【参考】短波標準電波JJYの受信音(1976年録音 JF3CGN)再生再生(MP3)
短波は電離層で反射するため、伝搬距離の変動による時間遅れや海外からの混信を招き、正確な時刻信号を届けるには適していなかったことが録音からもわかります。背景に聞こえる英語は海外の標準電波局の混信です。(女声はハワイのWWVH、男声は米国本土のWWV)
【参考】検見川とJ1AA(標準電波の歴史)(History of Citizens Band Radioのサイト)

【参考】官報 1940年(昭和15年)1月6日 逓信省告示第1号

当時の我が国は言論統制下で、海外放送を受信できる短波受信機の所有は許可制でした。従ってJJYの放送仕様が官報で詳しく公表されても、一般国民が受信・利用する機会はほとんど無かったものと想像されます。

官報

【本運用に関する予告アナウンス一覧】 【本運用に関する報道・報告一覧】

J:COM千葉セントラル 「デイリー千葉」
送信所跡地でアマチュア無線記念局を運用
2015年4月27日放送


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